はたこうしろう絵本原画展『ゆき』

2018年12月7日〜18日

 

小さいお子さんをお連れのお客さまで、

絵本に親しんで欲しいけど、なかなか興味を持ってくれない

とおっしゃる方は少なくありません。

ページをめくると次々と絵が現れる絵本が面白い子もいるし

ポンポンはずむ、ボールの動きを追うのが面白い子もいます。

絵本が好きな子が賢くて、ボールが好きな子が幼いわけではないと思います。

ポンポンはねるボールを追いかけたことがある子は

絵本に描かれた、ポンポンはねるボールの面白さが感覚的にわかります。

なので、興味あることを存分に楽しんだらよいのでは、と思います。

絵本は感性を磨くものであることに疑いは持ちませんが、

実体験は、絵本をより深く感じ取れる感性を磨きます。

 

はたこうしろうさんの絵本を読むと、

「さあ、絵本をおいて外に飛び出そう!」と言いたくなります。

絵本屋なのに。

『なつのいちにち』を開くと、太陽の眩しさに目がくらみ、肌にささる暑さや

耳をつんざく蝉の声、うしごやの匂いだって、懐かしく思い出されます。

過去に体験して得た感覚が呼び覚まされます。

『どしゃぶり』の、雨と遊ぶ男の子。

ゲリラ豪雨級の大雨に、ぜひ、打たれて、とは申しません。

そこは、絵本で疑似体験するとして、

雨が降る前のにおい、傘を打つ音、雨粒が手のひらを叩きつける感触、

そういう感覚があると、絵本を開いた時に「わかるな〜」という感覚が得られますよね。

わかるって楽しいものです。

そして、絵本を読んで共感した体験が、急な雨に見舞われた時に

『どしゃぶり』の世界だ〜、と雨に関心を抱かせます。

そんな風に、絵本と実体験を行き来して、

お子たちの育ちに、絵本が寄り添えたら素敵じゃないかなぁと思います。

 

11月下旬に、新刊『ゆき』が出るときいて、飛びつきましたよ。

ドキドキしながら原画展をお願いしましたら、快くご承諾いただきました。

雪が降ったら、ぜひ、一緒に雪遊びしてください。

雪の冷たさを感じてください。

ブーツの足の指先がじわじわと冷えてくるでしょう。

十分、冷えたら、あったかいこたつで丸くなるましょう。

そうして、『ゆき』を開いて、「ゆき」の歌をくちずさんでみてください。

 

原画展開催は、12月18日まで、この機会にサイン本を手に入れてくださいね。

『すずちゃんの のうみそ』原画展 2018年11月16日〜27日

 

私が小学校1年生の時、中間休みに、かくれんぼをして遊んでいたのですが、チャイムが聞こえなかったので休み時間が終わってるのが分からず、気づいた時には誰もいない廊下を走って教室に戻ると授業は始まっていて、先生にひどく叱られました。どうして、自分だけチャイムが聞こえなかったのか分かりませんでした。

難聴だと、はっきり知ったのは、小学校1年生の学校の聴力検査がきっかけでした。そして、母に連れられ、日赤の専門医のところに診察に行きました。診察前の聴力検査の時に「音がなったらボタンを押して」と言われ、音がなったと思ったのでボタンを押すと「音がなった時だけ、ボタンを押して!」と何度も言われ、しまいに、「音を出してないのにボタンを押してる、これじゃ検査なんか出来ない」と若い先生に叱られました。耳鳴りと実際に聞こえてる音の区別がつきませんでした。でも、それを説明もできませんでした。専門医は優しく、感音性難聴だから治ることはないと言いました。ふ〜ん、そうなんだ、みんな、もっと聞こえてるんだ、くらいにしか思いませんでした。

いつから聴こえなくなった、というきっかけに思い当たりがありませんでしたので、多分、生まれつきだと思います。日常会話は出来たので、誰も気がつきませんでした。でも、テレビの音を大きくして聞くため、姉がピアノの練習をする時はイヤホンジャックを右の耳につけて聞いてました。すると、「ご飯だよ」と呼ばれても聞こえませんでした。

姉は片方の耳にイヤホンをつけていても、もう片方の耳でテレビ以外の音が聞こえるので、よく聞こえるんだなぁと思っていました。

聞こえにくいことで、たくさん叱られたり、人の機嫌を損ねたり、実際以上に頭が悪いと思われたりしてきたので、聞こえないことは、人の迷惑なんだと思ってました。だから、頑張って、聞こえてないことがバレないようにしました。

高校生の時、英語のリスニングテストがあり、放送で英語が流れるのですが、最初から最後まで、ブーッという雑音しか聞こえませんでした。先生に「難聴でテープの音声が聞き取れない」というと、「それがリスニングだから、しょうがない」と言われました。その時、なんのためにバレないように頑張ってきたんだろう? と思いました。

気安く話せた社会の先生に、「私の名前は『聡子』ですよ、耳へんがついてるのに聞こえない。『名は体を表す』っていうのにおかしいでしょ」と愚痴をこぼしました。先生は、「あら、公の心に耳を傾けるって書くの、すごく、あなたらしいよ」と言ってくれました。それから、聞こえるということ、聴くということはどういうことなのか、いつも頭の片隅においています。

聞こえないことを人に悟られないようにするよりも、周囲に理解を求めていく方が、自分のためにも周囲のためにも大事なんだと思います。特に子どもは、自分が他の子とどう違うのか分からないので説明ができません。

『すずちゃんの のうみそ』は、自閉症(ASD)のために喋れないすずちゃんの代わりに、すずちゃんのママがお友だちの疑問に答えます。ほいくえんを卒園する年齢の子たちに向けたお手紙です。優しい口調と同じように優しいタッチの絵で分かりやすく伝えます。「ふ〜ん、そうなんだ」と、子どもの心にスーッと入ってきます。ひとつひとつの言葉が、鈴の音のように心に響きます。

 

 『すずちゃんの のうみそ』

 文・竹山美奈子

 絵・三木葉苗

 監修・宇野洋太

 岩崎書店

『スロバキアのともだち・はなとゆろ おるすばんのぼうけん』より

福井さとこ絵本原画展

スロバキアのともだち・はなとゆろ おるすばんのぼうけん

2018年7月6日〜17日 11:00~18:00 入場無料

 

お話会 7月8日(日)、14日(土)両日共14:00~

 

 

4歳くらいの頃です。家でひとりでおるすばんをしてました。

畳の部屋に寝っ転がっていると、ふと、ダンゴムシがいるのに気がつきました。

じーっと見ていると……ふいに、ダンゴムシが大きくなって、どんどん大きくなって、

うわ〜、家がふっとばされてしまう! あぶない、逃げろ!

とっさに思いついたのが、姉のいる幼稚園。

歩いて10分くらいはかかると思うんですけど、走って逃げ込みました。

「ダンゴムシがおうちをふっとばす!」

と言ったかどうかは忘れましたが、間もなく連絡を受けた母が迎えにきて

「すいません。この子は空想好きなもので、オホホ」なんて、やってたと思います。

ダンゴムシ事件は笑い話になりましたが、

空想じゃないのにな、でも、やっぱり空想なのかなと、ずっと思ってました。

ところが、最近「不思議の国のアリス症候群」という症状があるのを知り、

モノの大小が実際と違って見えたり、人の顔が歪んで見えたりという、

不思議な症状があるそうです。

多くは幼児期の一過性のものだそうですが、ああ、きっと、これだわ。

今度から、「私、こどもの頃、アリスだったの」って言おうと思います。

 

それはさておき、おるすばんって楽しいでしょ。空想し放題!

カーテンを体に巻きつけてドレスとかやったり、変な踊りをおどったり、

『スロバキアのともだち・はなとゆろ おるすばんのぼうけん』を開くと、

そんなワクワクを思い出し、心はこどもの頃に飛んで行きました。

 

福井さとこ 作  JULA出版局

 

布や棒切れでまほうをかけたり、テントウムシの背に乗って飛んだり、

空想で、何でも出来る。何にでもなれるし、どこにでも行ける。

スロバキアの呪文や名前にまつわる風習、童謡が盛り込まれた楽しいお話です。

スロバキアの人にとっては、当たり前の日常かもしれませんが、

日本の大人には、どこか懐かしい。お子たちには新鮮かも。

作者の福井さとこさんは、日本の美大を卒業後、

スロバキアを代表する版画家ドュシャン・カーライ氏に師事。

スロバキアのブラチスラバ芸術大学でカーライ氏のもと、版画を習得されました。

木版画のざっくりした線や色のかすれ、素朴な色調が、

スロバキアのお子たちの、のびやかな感性を思わせます。

本作は、ブラチスラバ芸術大学大学院卒業の卒業制作作品で、

福井さとこさんの絵本出版デビュー作になりますが、

2018年度、スロバキアの最も美しい絵本賞(学生部門)受賞されています。

今後の作品も楽しみな絵本作家さんのひとりですね。

美しい原画やスロバキアで制作された版画作品を、ぜひ、ご覧ください。

 

JUGEMテーマ:絵本作家原画展

たぬきの花よめ道中

町田尚子さんの絵本は不思議なリアリティがあります。

怪談えほんシリーズの『いるの いないの』を

最後まで読まれたなら、おわかりいただけると思いますが、

「まさか、そんな!」という衝撃。

「絶対、いるやん!」というリアリティ。

同時に「待って、見たことあるような気がする…」

次の瞬間「あれは、本当にいたのかな いなかったのかな?」

気付いた時には、自分の体験になっているというリアリティ。

 

怖いのは『あずきとぎ』です。

日本中、どこにでもある田舎の風景です。

ゆったりと流れる川の深い緑色、蝉の声、木々のざわめき

いや、ちがう? あれは何の音?

しょきしょきしょき

聞いたことある……

その瞬間から「あずきとぎ」は、

むかしむかし、あるところのお話ではなく

去年の夏、おじいちゃんの家で、というリアリティ。

 

自分のことのように感じられるリアリティは

絵本にとって、ひとつの重要な要素だと思います。

怪談ではありませんが、『ネコヅメのよる』を読んだら

夜道をネコが急ぎ足で横切ると、

ふと、今宵の月は? と夜空を見上げてしまう。

これぞ、町田マジック

 

最新刊『たぬきの花よめ道中』で、

人間に化けたたぬきを、どんな風に描かれるのか楽しみにしてました。

尻尾が見えてるとか、そんなありきたりな表現じゃないんです。

目ぢからハンパない。

たぬきの目をした人間、人間の目をしたたぬき。

あれ? 山から都会に出てきたのは、人間? たぬき?

どっちでもいいような気がします。

誰でも、多かれ少なかれ、化けの皮かぶってるんじゃないのかな。

だから、もし正体を見破ってしまっても

そっとしておきましょうよ。

大事なのは、好きな人と一緒にいることだから。

 

 

『たぬきの花よめ道中』

最上一平 作

町田尚子 絵

岩崎書店

 

『いるの いないの』

京極夏彦 作

町田尚子 絵

東雅夫 編

岩崎書店

 

『あずきとぎ』

京極夏彦 作

町田尚子 絵

東雅夫 編

岩崎書店

 

『ネコヅメのよる』

町田尚子 作

WAVE出版

 

 

あしたから書店員です。

不思議な感じです。

ここに住むようになって、間もなく20年です。

娘が生まれたころ、近くの公園は、まだ空き地で入れず、

検診などで区役所に行くと、同じ年齢の子がひしめき合ってるのに

みんな、どこで遊ばせてるの? と思うくらい

日頃は、近所で姿を見かけませんでした。

私はというと、車に乗せて遠くの広々とした運動公園まで連れて行き、

走り回らせて疲れさせて寝かすという、いわゆる放牧ですね。

おそらく、他の皆さんも同じような感じだったのではと想像します。

娘が小学校に入学した頃に、ようやく公園が整備され、

徐々に親子連れの姿が増えていきました。

そして、長男が入学した頃、当時の校長先生から

図書室を整備したいので手伝ってもらえないか、

とお電話をいただき、とりあえず図書室を見に行きました。

昼休みの図書室では、図書委員の子たちが野球してました。

誰も本を読みに来ないし、ボロボロで背表紙の字が読めない本もたくさん。

本の分類方法が統一されておらず、どうやら文芸とそれ以外に分かれてる様子。

探したい本の手がかりも掴めないし、どこに戻したらいいかもわからない。

確かに利用しにくい図書室でした。

これを、日本十進分類法にしたがって統一したい。

奥付を見ると、N.D.C.726とか書いてある、あれです。

本があるべき場所にあるようにしたいと、先生はお考えでした。

公共の図書館もこの分類法にしたがって配架されています。

と、聞いてます。

私たちは、小学校用に簡略化された適用例を参考にしましたが、

小学校とはいえ、図書室の本全部だと何千冊……

ひたすらラベルを貼り替え、破れた本を修繕し、大変でした。

大変だけど、この作業、好き。よくぞ、私にお声掛けくださった。

それ以来、図書ボランティアです。

先生の情熱が実を結び、図書室は見違えるように綺麗になりました。

ここで野球をしようなぞ誰が思いつくものか、というくらい。

図書室がきちんと整備されると、児童たちが本を読みにくるんです。

昼休みの終わりを告げるベルも耳に入らないほど、熱中するんです。

ちゃんとした場所さえあれば、本を読むのが好きな子はたくさんいるんです。

公園が出来て人の動きが変わったことと図書室が機能し始めるのを間近で見たことで

町に本屋ができたらいいのになぁ、という思いが次第に膨らみ始めました。

物置に使っていた家も雨漏りがひどく、直すか潰すかの選択を迫られてました。

誰かここで、本屋やらないかなぁ。

誰かって、、、あたしか。

そういうわけで、あたしから本屋はじめます。

あしたから書店員です。